馬場匡平|HASAMIブランドマネージャー|長崎県波佐見町

波佐見焼商人の末裔が紡ぎ出す

400年の職人技と今っぽさのハイブリッド。

文:引地かい

 

日本陶磁器生誕400年。佐賀県の有田焼とともにその長い歴史の礎を築いてきたのが長崎県波佐見町の波佐見焼だ。最近では、和テイストのシンプルさと遊び心を兼ね揃えた実用的な陶磁器として、様々なファッションブランドや異業種とのコラボレーションで注目を集めている。その震源地に向かう途中、話す人がみな口を揃えて言う。「あの髭に会え」と。

 

波佐見焼を取り扱う有限会社マルヒロの営業所。その隣にある直営店の扉をあけると、整然と重なり合うように積み上げられた陶器の塊が現れる。その塊の上が展示スペースとなっており、客たちはその、まるで積み重なった長年の歴史を象徴するような陶磁器群に登り、その上に陳列された現代の商品を拝見することになる。

 

と大げさに言いながらも、そんな事前情報がなくとも、とにかくインパクトのあるエントランスだ。子供や外国人の心もすぐ鷲掴みにする。そこにもうひとインパクト。営業所から出てきた髭もじゃの男性が馬場くん。巷で有名な「髭の彼」である。一見、強面風だが、終始笑顔で物腰も柔らか。しかし波佐見焼の話になると目が鋭くなるのが印象的だった。

 

波佐見町はその他の皿山(陶磁器を生産していた場所を指す九州地方の言葉)同様、町全体でひとつの産業である。完全な分業制を構成することで、それまで高価なものであった陶磁器の低価格化を実現し、「大衆食器」として世に普及させた。日本で最初の大量生産を実現したのが波佐見焼であるとも言われている。採石、陶土、型業、素地業、窯元などからなる分業制のうち、馬場くんの家系は「商人」。要するに「売るひと」だ。なるほど、その人当たりの良さと時に鋭くなる眼光に納得がいった。

 

「専門学校のため福岡に出たのが18歳の時。その後、大阪でのアパレル勤務を経て、23歳で波佐見に戻りました。外での経験を踏まえ、流行にあわせた柔軟な体制が不可欠だと痛感し2010年に自身のブランドHASAMIを立ち上げました。」製品を作り上げるのに多くの人が関わる分業制では、新しいことを始めるためには膨大な費用と時間と手間がかかってしまう。

しかし、そここそローカル商人としての腕の見せ所。持ち前のすっと懐に入る物腰とフットワークの軽さで、分業制の垣根をゆうに飛び越え、皿山の中を縦横無尽に駆け巡り、現代のライフスタイルにあった「道具」をプロデュースしている。「伝統や品格を重視する有田焼とは異なり、波佐見焼はもともと大衆食器として、その時代のはやりすたりをあの手この手で切り抜けてきた歴史がある。そういう意味はみんな意外と柔軟なんですよ。」と微笑む。その精神こそまさにHASAMIの強さそのものなのだ。

 

そんなHASAMIの最新作がSOAKシリーズである。30年ほど前に流行した塩化という絵付け用の絵の具を石の地肌に染み込ませることで、釉薬を使わず、石地そのものに色付けしている逸品だ。「波佐見焼は常に道具であるために「使いやすさ」を追求していました。でも、あまりにも「使う人目線すぎた」ということもあります。

収納しやすさ、持ちやすさ、強度など、使い勝手のよい要素をまとめ上げていくとどうしてもシンプルなデザインになっていく。シンプルすぎるとと400年培ってきた職人技術が活かしきれない。使い手目線になりすぎることで、作り手のクリエイティビティが薄れてしまうこともある。だからこそ今回のSOAKシリーズでは、過去の技法に立ち返って新しいアイデアを組み込み直してみたり、磁器を極限まで薄くする技術を採用したり、作り手のクリエイティビティをふんだんに盛り込むことで職人技術の維持・向上にも貢献していきたいと思っています。」

 

直に感じる石の感触と、日々使う事で馴染むむら。この繊細なクラフト感こそ、400年の歴史の上に陳列された、現代における、大衆食器としての「あの手」なのかもしれない。

 

馬場 匡平 | ばば きょうへい

長崎県波佐見市出身。波佐見焼の商人家系に生まれる。現在は波佐見焼の企画販売を行う有限会社マルヒロに勤めながら自身のブランドHASAMIや馬場商店の企画なども行う。自身が企画・主宰した波佐見、有田、武雄、嬉野の4つの町をまきこんだイベント「ぐるぐるひぜん」では4日間で1万人を集客した。

http://hasamiyaki.jp

 

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写真:伊藤 大介