荻野みどり|TAKECO1982プロデューサー|福岡県久留米市

敏腕プロデューサーが仕掛ける新プロジェクトは

Act Locallyの精神そのもの。

文:引地かい

 

「久留米をポートランドみたいにしましょう」そんな他愛もないことを彼女と言い始めたのが数年前。お互い半分冗談、半分本気だった。しかしその勝手な目標は着実に前に進んでいる。

 

ポートランドとはアメリカ西海岸、オレゴン州にある都市。近年ではアメリカ国内で最も注目される人気移住都市の代表格だ。豊な自然と都市部が隣接しており、米国の地方都市には珍しく、公共交通機関が発達しており大半の場所に歩いていけるコンパクトシティという点が最大の特徴だ。また、アメリカ西海岸のその他の都市部に比べ、経済規模が小さく物価も安い。その上地産地消や起業家精神を重んじる風土が根づいているため、若者やアーティストたちが流入しやすい環境が整っている。正直、まだまだ久留米はポートランドにはほど遠い。遠いが、似た雰囲気や環境はあると僕らは思っている。

 

彼女の名は荻野みどり。東京に本社を構えるオーガニック食品の製造、輸入、販売を行う会社の代表だ。近年ではまだ記憶に新しいココナッツオイルブームの火付け役としても知られる。「自分の娘に食べさせたいと思える安心安全なお菓子がない。ないなら自分で作ろう。」そうして彼女は手作りのお菓子をファーマーズマーケットで販売し始めた。そのお菓子作りの過程で市場に安心安全なオイルが少ないことに気づき、調べるうちにココナッツオイルにたどり着いた。まだ2歳にもならない娘を抱えながらフィリピンやタイに飛び、工場と直接交渉し、輸入し始めたのだ。

 

彼女の原動力の根底には「わが子に食べさせたいかどうか」という、ひとりの母親として抱くパーソナルな感情がある。そしてそれこそが世界中の母親たちも共感する普遍的でグローバルな価値観なのである。

 

そのパーソナルな感情が、今、ローカルに向けられている。彼女は福岡県久留米市の出身なのである。

 

みどりさんが2015年に久留米市にオープンさせたスパイスショップ「TAKECO1982」のブランドストーリーはすでに30年前から始まっていた。というのも、「TAKECO1982」の由来は彼女の叔母にあたる吉川武子さんにある。武子さんは久留米でかれこれ30年ほどスパイス教室を主宰しており、地元では名の知れたスパイスおばさんだ。そんな武子さんもお年を召し、教室を続けるかどうか悩んでいたところに、みどりさんの「久留米ポートランド化計画」というパーソナルなローカルプロジェクトが重なった。

 

そうして吉川武子のスパイス教室をTAKECO1982としてリブランディングすることとなった。東京で活躍するグラフィックデザイナーや地元久留米で活動する若手クリエーターを起用し、他に類を見ない、独自の世界観をもったスパイスショップが完成したのだ。「やたらおしゃれな店ができた」と巷で話題の店内にはプロダクト化された武子さんのスパイスだけでなく、武子さんのスパイス教室を実施するスペースも完備している。さらにその奥にはスパイス調合を行う有機JAS事業所認定を取得した工房もある。

 

「久留米だからこそ出せるブランドの世界観に可能性を感じています。」みどりさんは続ける。「ブランドにとって、世界観を表現すること、顧客にそれを体験してもらうとはとても重要。と同時に、店舗であれば実売確保、トラフィック確保が命題になってくる。初期費用だけでなく運営費用もバカにならない東京でそれをやるのは難しい。その分、久留米ではもう少し余裕をもって展開できる。あとはここを拠点にどう広げていくか、ということだと思っています。」

 

「地元で何かしたいという気持ちはあります。ただ、ここからでていかなくても世界と勝負できる、ということを証明したいという思いが強いです。」彼女の活動には一貫性がある。それは活動の主目的が自分の子供だったり家族だったり地元だったり、ブレようのないパーソナルなものに向いているということだ。

そしてそれはきっと、現代の消費者がもとめるリアリティ以外に他ならない。

近年、言葉だけが先行しがちなAct Locally, Think Globallyという精神。そのAct Locallyは、よりパーソナルに物事を考え、実行に移す。まさに彼女の活動そのものなのかもしれない。

 

荻野 みどり | おぎの みどり

福岡県久留米市出身。現在は東京に本社を構えるオーガニック食品の企画製造販売、輸出入を行う株式会社ブラウンシュガーファーストの代表取締役社長。ココナッツオイルブームの火付け役として知られ、著書も多数出版。現代の働くママのロールモデルとしても注目を集めている。

http://takeco1982.com

 

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写真:伊藤 大介